京都フュージョニアリングがフュージョンエネルギープラントの水素回収試験を開始
京都フュージョニアリング株式会社は、フュージョンエネルギーの発電技術を実証する統合試験プラント「UNITY-1」で、独自開発装置VSTによる液体金属からの水素回収試験を開始しました。この試験は、プラント内での燃料増殖と回収技術の開発に不可欠であり、将来のフュージョン燃料サイクルシステムの推進に寄与します。
当社が開発を進める「フュージョン燃料サイクルシステム」は、燃料となる水素同位体(重水素およびトリチウム)の回収・貯蔵・供給等を担う重要な技術です。特に核融合反応を起こすのに使用できるトリチウムは自然界にはほとんど存在しないことから、プラント内での生成が不可欠です。トリチウムは、核融合反応により発生する中性子を、ブランケット内の液体金属(リチウム鉛:LiPb)中のリチウムと反応させることで生成されます。このプロセスにより、プラント内部で燃料を継続的に増殖させることが可能となり、生成されたトリチウムを回収・貯蔵することで、安定した燃料供給を実現します。
VST(Vacuum Sieve Tray)では、液体金属のリチウム鉛を真空環境下で上部から流し入れ、内部のトレイでリチウム鉛を液滴形状にて滴下させます。これにより、真空環境に露出するリチウム鉛の表面積を増やして、リチウム鉛中に溶解しているトリチウムをガスとして効率よく抽出・回収します。今回の「UNITY-1」での試験では、第一段階としてトリチウムの代替として、同じく水素同位体である水素・重水素を用いて水素回収を実証します。
今回得られたデータは、現在当社とカナダ原子力研究所(CNL)の合弁会社「Fusion Fuel Cycles Inc.」がカナダ・オンタリオ州にて推進しているフュージョン燃料サイクルシステムの実証を目指すプロジェクト「UNITY-2」において、実際にトリチウムを使用した環境下で行う試験にも活用されます。