3年間のアイドル活動のさなか、思うようにお芝居ができないもどかしさが募るほどに、「私はこんなにお芝居が好きなんだ」という思いは強くなっていった。昨夏フリーの俳優に戻り、今は舞台を中心に活動している。あの時間があったからこそ見えてきた、届けたいものと、これから挑みたいこと。遠回りに思えた日々を、確かな軸として静かに語る。
Q&A インタビュー
今はどんなお仕事をされていますか
今は普段、俳優として活動しています。舞台を中心にしていますが、それ以外にも、最近は広告やショート動画にも挑戦させていただいています。また、最近流行っているイマーシブシアターも始めて、イマーシブカフェというところで働いています。本当にさまざまなことをやらせてもらっていますが、基本は舞台がメインですね。肩書きを言うときには、舞台役者、俳優をやらせてもらっていますと伝えています。
事務所には入らずフリーで活動しているのですね
フリーランスで、自分で全部管理してやらせてもらっています。事務所に入ってもいいかなとはずっと思っているんですけど、事務所って騙されたりする可能性もあるじゃないですか。それが怖いかなと思って、なかなかきっかけがないんです。でも、フリーランスでも自分でお仕事を探してこられますし、人とのつながりでやっていくお仕事なので、それで十分成り立っていて、特に困っていないんです。
俳優としての活動歴を教えてください
最初は劇団に入っていました。小学生くらいの頃からお芝居をやっていて、その頃は劇団に所属していたのですが、中学生くらいで一度やめて、学生をやっていました。その後、地方公演や学校公演に行く劇団に入り、さらにその後、またフリーで活動させてもらっています。お仕事は本当に人とのつながりなので、知り合いから紹介してもらうことが結構多いですね。あとは、サイトでオーディションを探して受けに行ったり、広告動画を募集しているサイトで応募したりと、自分から足を運ぶことが多いです。舞台の共演者から「演出をやるから出てくれない?」と声をかけてもらうことも結構あります。途中、やっていない時期もあるんですけど、15年はやっているかなという感じですね。フリーになって何年になるかな。去年の8月末までアイドルをやっていたので、そこからだとまだ半年ほどですね。その前もフリーではやっていました。
お芝居を始めたきっかけは何でしたか
5歳くらいの時に劇団四季を見たんです。それにすごく感動したみたいで。あまり記憶にはないんですけど、すごく感動して、今までの灰色だった人生が急に色づいたような感じになって、そこから「お芝居がやりたい」と言ったみたいで、劇団に入ったという感じですね。そこからずっと続けています。選び続けているという感じではあるんですけど、それ以外を選ぼうという気にならないんです。私、結構飽き性なんですよ。それなのに、お芝居だけはずっと飽きないというか、ずっと好きでい続けられて、ずっと夢中になっています。それでもやっぱり、アイドルを3年間やったんですけど、そのアイドルをやっているときに、私ってお芝居がこんなに好きなんだと思って。できなかったからこそ、アイドル時代に、やっぱり私はお芝居をやりたいとずっと思っているんだなと気づきました。あとは、私、子供も好きなんですよ。だから子供たちに向けて、もっとお芝居を届けたいという気持ちがすごく出てきて。ただやっているだけじゃなくて、具体的な先のことを考えるようになったのは、3年前くらいですかね。
俳優の仕事で大変だと感じることは何ですか
普通の仕事をあまりやったことがないからわからないんですけど、ずっと自分と向き合い続けなきゃいけない仕事ですし、稽古期間、練習している時間って本当に、なんていうんでしょう、わからないものをずっと追求し続けなきゃいけないんです。それが楽しいんですけど、やっぱり苦しいと思うときはあります。つらくなってしまうときもある。役によっては、やっていると本当に苦しいんですよね。「なんでこんな役をやっているんだろう」と、自分じゃないのに自分にあてはめてしまうから、苦しくなったりもします。あとは、舞台の役者だけでは生きていくのが大変なお仕事なので、映像など、いろいろなことにチャレンジしていかないといけないんです。舞台だけだと収入と見合わなくて、生きていくには大変だという苦しさもありますね。演劇界全体で、みんな言っています。「もう大変だよね」と、アルバイトをしながらという人が多いですね。
稽古では どんな苦労がありますか
稽古は長いですね。最近はだいぶ短くなったと言われているんですけど、それでも5時間とか6時間とかやっています。稽古は本当に大変だと思います。だって同じことを何度も何度もやるんですよ。しかもセリフも入れてこなきゃいけない。そうなると、普通の仕事とは全然違うことをやって生きているなと、突然思ったりしますね。何回も同じシーンをやるので、たとえば「おはようございます」「おはようございます」というシーンを1日10回くらいやるんです。「そう、違う」となって、「何が違うんだよ」と思う。それが1日おいてみると「これか」とわかる時が、本当によくあります。「こういうことが言いたかったのか」と腑に落ちるんです。私は、家に持って帰って「どうかな、こうかな」とずっと考えていると突然ひらめくタイプなので、その場で「今こうだよ」と言われても「わからない」と思いながらやっていますね。
やっていてよかったと思う瞬間は
やっぱり、お客さんに喜んでもらって、「また見たい」とか「あなたのお芝居がすごく好き」とか「この作品に出会えてよかった」と言ってくれたときは、やってよかったと思いますね。「明日も頑張ろうと思うよ」といった声をかけてもらうと、お芝居っていいなと、自分でも思います。
役者を続けて得られたものは何ですか
役者って、もともとはめちゃくちゃ人間じゃないですか。だから、その人間のなかにあるものしか出てこないんですよ。結局、自分が成長しないことには役の幅も広がらないし、自分の持っているものでしか表現できない。だから自分の幅を広げるしかないと思っています。それは、毎日悩むことや「つらい」と思うことがあっても、役者のための勉強だ、これも成長の一つだと思えば頑張れるんです。人間として成長できたら役者としても成長できた、それが日々の積み重ねだなと思って、役者は本当に面白いといつも感じています。役者をやることによって人として成長できている。私が役者じゃなかったら成長できなかっただろうなという場面が本当にたくさんあるので、やっていてよかったなと思います。
体力面での負担はどうですか
私、体力は無限大ではないので、あまりないんですよね。でもやっぱり、舞台にはダンスやアクションがある作品もあるので、そういうのが続くと、「腰が痛い」「脚が痛い」とたまになりますね。もともと痛めていたところを余計にひどくしてしまって、本番だからと無理をしてやってしまうこともあります。でも、数日すれば治るしと思ってやっています。
忘れられない現場のエピソードは
すごくロングランの公演をやらせてもらったことがあって、1ヶ月間同じ劇場で、その後は遠征して名古屋で2週間ほどやらせてもらいました。その役がヒロインで、全員がずっとめちゃくちゃ喋る話だったんです。警察のお話で、私はずっと喋り続けることもできないし、警察をやったこともないし、頼りない感じだったので、「もっとはっきりしろ」とずっと怒られていて、稽古期間はいっぱいいっぱいになってしまいました。でも、千秋楽が近づいてきて、最後の公演が終わったときに、演出家の方から「よく頑張ったね」と言っていただいて。今まで苦しかったものが、ちゃんと届けられるようになったんだ、その苦しかった期間のおかげで、いつのまにか届けられるようになっていたんだなと思えたんです。それがすごく、なんて言うんでしょう、自分の、楽しいだけじゃない演劇、そのしんどいこともしっかり積み重なるということを、改めて感じることができました。
アイドルを経て変わったことはありますか
私のなかで大きな差が生まれたなと感じたのは、アイドルをやる前とやった後ですね。やっぱり、来てくださる、見てくださるお客さんが多くなったので、アイドルをやめた後、評価がかなり変わったかなと感じます。昔はそういうことを全然考えていなくて、ただできたらいいという感じがあったんです。そう思うと、アイドルをやめた後は「このくらいお客さんに来ていただけます」と提示できますし、「私は今までこういうことをやってきました」と示すこともできる。そこは、やめた後に自分のなかですごく確立してきたという感じですね。
役者に一番必要なものは何だと思いますか
人間力ですかね。人間力が本当にすべてというか。それこそ、オファーのメールをいただいてお返事するというだけでも、「ご連絡いただきありがとうございます」と一言あるだけで、しっかりしている人だなと思うじゃないですか。そういう力や、人に対する向き合い方で、やっぱり変わってくるんだろうなと思います。同じ役で、同じくらいダンスが踊れるとなったら、絶対に人間力がある人のほうを取りたくなる。それが一番大事だったなと、最近すごく思います。
日頃から意識していることはありますか
やっぱり、いろいろな作品を見ることをすごく意識しています。舞台や映画など、いろいろと意識して取り組んでいますね。本当に日常生活のなかでも、「あの人面白いな」と思ったら見ていたりして。普段からずっと芝居のことを考え続けることが一番の近道だと思うので、それを意識しています。
子供たちにお芝居を届けたいのですね
私自身が、子供の頃にお芝居を見て感激して、世界が広がったので、そういう子を一人でも増やせたら、その子たちのためにもいいなと思います。あとは、下心のような気持ちもあるんですけど、今、映画やドラマ、ショートドラマに対して、お芝居がすごく下火なんですよ。だから少しでも、お芝居をいろいろな人に見てもらって、子供の頃からお芝居を見る習慣をつければ、大人になっても見るだろうという、そういうちょっとわるい心もあります。ああ、そんな大それた、大きなものではないですけど、少しでも、一人でも多くの人に演劇の魅力が届いたらいいなと思いますね。
将来 どんなことに挑戦したいですか
演劇の作品、舞台を1本打ちたいなと思っています。やっぱり、やってみないことには、どのくらい労力やお金がかかるのかわからないですし、自分に本当に向いているのかもわからない。作る側になると、また見え方が変わるじゃないですか。そういうことも、団体として作るということをやりたいですね。役者以外の制作の業務も少しお手伝いさせてもらったり、素敵な役者さんがいたら、いろいろなところにつないでみて、「どうかな、合うかな」と見てみたり。今までの自分ではあまり熱量を注がなかったところにも、意識して目を向けるようにしています。
これから挑戦する人に伝えたいことは
自分の思うように、自分がやりたいと思ったことを貫いてやれば、おのずと道ができてくると思いますね。やっぱり、自分の意志をすごく強く持って、そのために取り入れられるものはすべて取り入れてやっていけばいいんじゃないかなと思います。