母が癌を患ったとき、結婚も子供もいない自分にできる恩返しは何か——そう考えたのが始まりだった。母が夜な夜な灯すろうそくを見て、百均の材料で作った一本をSNSに載せると、思いがけず反響が。恩返しの思いから踏み出した道が、今の生き方になっている。
Q&A インタビュー
現在のお仕事を教えてください
はい、私はキャンドル作家兼、あとはロゴのデザインと、アパレルのデザインをしております。キャンドルだけじゃないです。はい、自分の、例えばその洋服のブランドのロゴとかもそうなんですけど、あとは、いろんな人からロゴをお願いしたいってことで、ロゴをデザインしたりとか、あとは自分の洋服のデザインっていうのもやったりしてます。店舗はないんですけども、オンラインでインスタグラムだったりとか、あとはBASEっていうサイトがあると思うんですけれど、それを通じて販売したり、あとはイベントとかで対面販売したりとか、そういうことをしております。
この仕事を始めたきっかけは
もともと職種はサラリーマンをしてたんですよね。8年前までエンジニアっていう形でやってたんですけれど、私の母親が癌になってしまって、ちょっと命が危ないと。結婚もしてなければ子供もいないので、恩返しをしなきゃちょっとまずいなってなったんですよね。よく夜な夜なろうそくを灯してたんですよ。で、僕もちょっとそれを見てて、これで何かできないかなと思って、で、百均に行ってろうそくを買って、で、溶かして型にはめて、それをフェイスブックにあげたら、いろんな人に見ていただいて、すごいということで、じゃあこれを目指してちょっと頑張って、恩返しをしようと思って、今に至るという流れでございます。
作風はどのように確立していったのですか
最初は全然定まってなくて、どういうのが作りたいかというのもなかったんです。で、でもやっぱり、この道を極めようと思って、実際に、自分はキャンドルアーティストになるための資格っていうのを、実際に取得してるんですよね。で、東京の、南青山の方に、キャンドルの学校があるんですけれども、そこに通って、実際にその、筆記試験だったりとか、実技受けて、初めてそこで合格して、認められたアーティストってことになった。で、それで、自分はなかなかその男性の作家がなかなかいないので、またその自分の趣味も生かして、何かできないかなっていうので、今ちょっと自分流のスタイルっていうのは、時間がかかっちゃったんですけど、仕上げた、仕上げたっていう感じですね。
始めた頃はどんな悩みがありましたか
やっぱり恩返しだったので、売上も作りたい。でも、上にはやっぱりいろんな先輩がいらっしゃるので、到底かなわない。自分のその形もない。だから何を作りたいんだろう、何を販売したらいいんだろうっていうところでは、結構迷ったり、自分の形になるまでは、ちょっとやっぱり時間はかかったなと思います。
制作の工程を教えてください
元々その、僕たちが使う業務用のろうそくがあるんですよね。すごいあの、米粒まではいかないですけども、小粒よりちょっと大きいんですけど、そういった粒をいっぱい買ってきて、だいたいその、20キロ、業務用のろうそくがあるんですけど、20キロで、だいたい今2万円くらいなんですけど、そういった材料を買って、溶かして、着色専用の、あの、塗料があるんですけど、そういったものをつけて流して、で固まるまでにもお時間がかかっちゃうので、まあ半日もしくは1日置いたりとかしてやっと完成。だから結構完成まではまたちょっとお時間がかかっちゃったりとか、でどうしてもそのいろんな色を配合したりするので、まあ難しいんですけど、自分のイメージ通りとはならない時があったりするんですよね。だからその熱の問題だったりとかもあるので、ちょっとそういった部分あるんですけど、まあ工程としてはそんな感じですね。
制作でこだわっているのはどこですか
溶かしたろうそくを流すんですけど、注蝋っていうんですけど、流す時に、やっぱりある程度の温度があるんですよね。一定の温度で流しちゃうと、イメージしているものには全くならなかったりとか、ひびが入っちゃったりとか、いろいろムラが出ちゃったりとか、そういった部分があるので、温度の管理は徹底的にしているっていう感じですね。あとは、強度を加えたりするんですけど、その時に、このろうそくの材料に対して、また添加物っていうのを加えたりするんですけど、そういうのを加えることで、周りの強度が高まったりとかっていうのもあったりするので、そういうのをやっぱり気をつけなきゃな。やっぱり割れたりしちゃうとクレームになっちゃったりするので、そういったところは気を使ったりはしますね。
一番苦労したことは何ですか
僕自身もすごく悩んだんですけど、やっぱり、いろんなハンドメイド作家もみんな通る道なんですけど、作ってるものが他の方と被ってしまうっていう、形だったり色だったりとか。で、自分は結局何を作ったらいいんだろう。結構今もう多分迷われてる方って、たくさんいらっしゃるんですよね。だからその中で、いかにこう自分のスタイル、誰ともかぶらないっていうのを探し出すっていうのも結構大変だったりするかな。自分色っていうのを見つけるのは大変かなと思いますね。
やっていてよかったと思う瞬間は
実際にやっぱこう、仕事をやめて、今この仕事をしてるんですけど、それが売れた時、自分が作ったもの、それが認めてもらえた時っていうのは、やっててよかったなと。でまたその売り上げを、例えばその、何ですかね、寄付したりとかして、でそこでお礼のお手紙をいただいたりするんですよ。その時にやっててよかったなっていうのはあります。あとは自分が作った作品を人に紹介してくれたりとか、でそれを通じて欲しいって言ってくれる方もいらっしゃるので、その時はやっぱりやっててよかったなとは思います。またそれ作って、良かったから他の人にも紹介するよっていう風に、いい連鎖が生まれるんで、そういうのもすごく良かったなと思うんですね。
一番テンションが上がるのはいつですか
実際に流して、固めて、抜くんですよね。その時に実際にこう、抜かないと中がどういう色になってるかっていうのが見えないんですよね。それを抜いた時に、良い色の混ざり具合とかしてると、すごくテンションが上がります。きれいだなって、これ売りたくないなっていう風にもなったりするんですけど、そういう時が一番テンションが上がるかもしれないです。あとは自分が作ったものを、山とかでともしたりするんですけど、山の景色と自分の作ったものがすごくマッチしたときは、テンションが上がります。
自営ならではの不安はありますか
自営なので、波がやっぱりあるんですよね。そういった部分で、売れる売れないっていう、キャンドルなんで、夏になって売上が下がってきちゃうんですよね。暑いですし、火つけたくない。そういった部分で、どう売上を作ろうかなっていう時がやっぱちょっとハラハラするかな。
印象に残っている出来事は何でしょう
東京の下北沢というところで、クリスマスにろうそくをともすイベントがあるんですよ。それぞれいろんな作家さんが、その下北沢の街に自分の作ったキャンドルをともすんですけど、そのコンテストなんですよね。その中で、自分の出した装飾キャンドルが、皆さんの投票で選ばれて入賞したっていうのは、すごく嬉しかったです。そういうのやっぱり東京の世田谷でやりたいっていう方がいっぱいいらっしゃるんで、ともすっていうことをその中でやらせていただいて、賞が取れたっていうのは、自信につながったなと思います。
業界に入って驚いたことは何ですか
驚いたことは、僕男性からして、男性の作家が全然いないっていう。女性の作家がほぼ、多分9割だと思うんですけど、だからもともと男性がろうそくを好きになっていいのかなみたいな人が結構多かったんですよね。実際僕はこういう見た目なんですけど、そういう人からも、キャンドルいいねって、実際に使う人が周りも増えていたので。思った以上にびっくりしたのは、女性の層は圧倒的に強すぎたなっていう。アーティストもそうですし、買い手もそうですし。僕は多分これをやらなかったら、男の人がそういうのを買ってもいいのかなって、どうしても女性のものっていうイメージが強すぎちゃうので。そういったところもちょっとこう、なんか変えられたっていう、まあ、あるんですけど、なんか良かったのかなと。そういう人が増えて、今はだいぶ変わってきたのかな。
頭の中はいつも作品のことですか
仕事してない時も基本的には、どういう色を今後作っていこうかなとか、どういう形を作ろうかなとか、どういう場所で灯そうかなっていうのは、常に頭の中にあるので、だから、切っても切れないというか。でも結局、遊びが仕事にもなったりしているので。でもなんかワクワクすることは考えています。こういうことをやったら喜んでくれるかなとか、評価してくれるかなとかっていうのは考えてますね。ここ来る道中も考えてました。例えばどこか走ってて、ここで灯したいなと思ったら、ろうそくに火をつけてそこで写真撮ったりとかもしてますし。
業界のために取り組みたいことは
例えば、この業界もそうですけど、また途中でやめてちゃう方多いんですよ。売れないからやめちゃうとか、人と被ってしまうからやめてしまうっていう方が、結構やっぱり自分の周りもいたので。だから、そうならないように、例えば、いろんな作家さんがフォローしてあげるとか、先輩方がフォローしてあげるとか、やめないでずっと続けられるような環境づくりっていうのを、僕らがやっていかなきゃいけないなと。これからやってみたいって人に対して、楽しいんだっていうのをもっとたくさん伝えて、そういう人を増やしていきたいな、アーティスト増やしていきたいなっていうのはありますね。
日々どんな研究をしていますか
そうですね、先ほどの話で人と被らないっていうところで、実験をするんですよね。この材料に対して、こういうものを加えたらどうなるのか、これを加えることで燃焼時間がどれくらい上がるのかとか、そういうのをひたすらやり続けて、人と差別化するじゃないですけど、なんか喜んでくれるものを作りたいので、そういった点では技術のアップをしているっていうのがありますね。
アーティストとビジネスのバランスは
やっぱりアーティスト志向は強めで、どうしてもビジネスは大事なんですけど、ビジネスばっかり考えてしまうと、たぶん自分の作りたいものが作れなくなってしまう。だから現状としては、自分が作りたいものでビジネスがついてきてくれればいいっていう感じですかね。いわゆる量産型にならないように、あくまでも自分のスタイルを見ていただいて、評価して、それで対価を得る。一応キャンドルアーティストっていうふうに名乗ってます。
キャンドルの魅力はどこにありますか
実際に、大体みなさん灯したことあるので、法事の、ほんとに細いろうそくだと思うんですけど、一般的に売っているキャンドルはちょっと大きかったりするんですよね。実際そういうのをともすと、癒され方が、普通のろうそくと違って、違うというか、見てて癒されるっていうのもありますし、あとは今これ、糸でできた芯なんですけど、ウッド芯って言って、枝の芯もあるんですよ。それに火をつけるとパチパチパチ、焚き火のような音がする。そういうのがありまして、より短い焚き火が家の中で、イメージですけど、焚き火の音を聞きながら癒されたりとかもできるので、究極に癒しなのかなと思います。
キャンドル作家を目指す人へ
そうですね、女性の方は、作家になりたい、自分の家で教室を開きたいとか、今も多いので、逆に男性の方、まあやっぱり、ろうそくが好きな男性の方が増えてきたので、今度は自分みたいな作家が増えてきたら、本当に嬉しいなと思いますし、男性の方でも、ろうそくを作って悪くないんだよっていうのは、広めていきたいなと思ってます。チームとして、なんか大きいことをして、なんか大きいイベントを作りたいなってのも思いますね。