派手なフレーズより、その手前の情報整理を大事にする。「受け取り方で勝手に決めつけない」——読んだ人に正しく伝わることを何より優先し、書く前の準備に時間を惜しまない。言葉の力を、目的から逆算して考える人。
Q&A インタビュー
今はどんなお仕事をされていますか
今はコピーライターをしています。住宅系の商品カタログを作るのが主な仕事です。
具体的にはどんなものを作っているのでしょう
例えば、秋向けに断熱用の新商品が出たというのを、スポット的にご家庭に配ったり、ホームセンターさんに配ったりするチラシを作ることもあります。あるいは、商品の概要を体系的に知りたいというご要望もあるので、商品全体のカタログを作ることもあります。特徴や、こういうカラーの商品がありますといったことを体系的にまとめたカタログですね。
コピーライターとはどんな仕事でしょうか
もちろん、フレーズを求められることもあります。例えばカタログであれば、見出しに目を引く言葉を入れたり、そのページの内容をまとめたものを見出しにしたりするので、そこで強くキャッチーな言葉を入れることもあります。有名なキャッチコピーはいろいろあると思いますが、それも言葉だけを作ろうとしているというより、その言葉を使って読んだ人にどういう行動の変容を起こしてもらうかを、すごく考えて作られていると思うんです。だからそれが、キャッチコピーという一つの言葉だけのレベルなのか、あるいはカタログ全体のことなのかという違いだけで、基本的には依頼してくださった方とお客さんとの間で、行動変容を促したいのか、ものを買ってほしいのか、商品を覚えてほしいのか、それはいろいろあると思いますが、それを実現するために言葉を使う、文字を使って何かをするというのがコピーライターかなと思っています。
言葉を選ぶときに意識していることはありますか
基本的には、あまり言葉からスタートするのではなく、何をしなくてはいけないのかをわりと考えます。もちろん言葉を、例えば丁寧な「ですます」口調で言うのか、それともエッセイっぽくくだけて書くのかといったことはありますが、例えば僕が作るカタログであれば、一番大事なのは、これを読んだ人がこの商品はこういうふうに使えるんだと正しく認識してもらうことなんです。正しく認識してもらうためには、例えば誤字があったら絶対にいけないので、そこは必ず気をつけます。誤字はどんな場合でもよくないですが、正しく情報を伝えるカタログでエッセイっぽいことを言っても、使い方としてはあるかもしれませんが、目的から少し離れてしまうのかなと思います。だから、何をしなくてはいけないかによって言葉を使い分ける。何をしなくてはいけないかがあると、どういう言葉で、どういう方向でいくのかが考えやすいんですよね。
もともとコピーライターを目指していたのですか
今コピーライターになって、2年経ったか経っていないくらいなんですけど、その前は広告代理店で働いていました。子供の頃からコピーライターへの憧れはあって、広告代理店に入ったときも、ラジオCMの原稿を作ったりと、多少コピーライターっぽいことはできていました。ただ、田舎の広告代理店だったので、一人で営業もすれば、絵コンテからお客さんにこうした方がいいと提案するディレクター的な役割もする、ある意味おいしいポジションでした。でも、何でもできる反面、お客さんの課題を解決できるような力がまだまだ足りないなと思って、もっとその力をつけたいと思ったのと、子供の頃から憧れていたコピーライターになりたいという、その2つを考えて東京に来て、たまたまご縁があってコピーライターをやらせてもらっています。
コピーで大切な力を一つ挙げるとしたら
一つ挙げるとしたら、情報をどう整理できるかだと思います。例えば、目の前の人と会話していて「パンが好きです」と言われたとします。その人は今朝パンを食べているかもしれないし、半年くらいパンを食べていない可能性もあるじゃないですか。ちゃんと考えればそうなんですけど、なんとなく「パンが好き」という言葉から、毎日食べているんだろうなとか、いくらでもイメージできてしまう。でもコピーに関しては、その情報を正しく整理していく必要があるんです。「この人はパンが好きだと言っていたので、いつもパンを食べています」みたいな順番で情報を組み立てると、全然整理されない、変な流れになってしまう。そうではなくて、この人が今朝パンを食べたことを知りたかったら、「今朝パンを食べたんですか」と話を聞いて、その情報を引き出す。情報を正しく組み立てて、受け取り方で勝手な決めつけをしない。それがまず、ものすごく大事なことだなと思います。
上司から学んだことはありますか
上司の方が、まず文章を整理するのが抜群にうまいですね。僕が50文字くらいで書いていたことを、「こことここはかぶっている」とか「ここは一つにできる」とか指摘してくれる。文章はやっぱり長ければ長いほどまどろっこしくなったりするので、そこをシャープに、でもちゃんと意味は伝わるように。意味を選択しながら余分な言葉を切り落とす、その作業が抜群にうまいですね。
わかりやすい言葉はなぜ大事なのでしょう
わかりやすい言葉って、お客さんに対してもすごく大事なんですけど、一緒に仕事をやる上でも大事で。わかりやすい言葉があると、みんなの共通認識が進むというか。もっと言えば、わかりやすく誤解がない言葉ですね。みんながそこに立ち返れる。だから本当に、すごく重要なスキルだなと思っています。
コピーを書く前にどのような準備をしていますか
パッと書くわけじゃないんですよ。例えばチラシを作りますとなって、内容を書いてデザイナーさんに渡す前に、まず僕にチラシの商品の知識だったり、お客さんがこのチラシを使って何をしたいのかという情報が必要です。あるいは、このチラシを出すときに競合さんはどういうアプローチをしているんだろう、どういう表現でこの商品を売り出しているんだろうとか。出そうとしているチラシが競合さんと表現がかぶったりしたら大問題なので、そういうところも気を使わなきゃいけない仕事なんです。その書く前の情報収集が結構時間をさくし、一日の中でもわりとそこに時間をかけているかもしれないですね。
独立は考えていますか
もし本当に自分に力がつけば、考えていますね。もし独立するなら、コピーの中でも僕が何かに特化できて、例えば住宅メーカーの商品にめちゃくちゃ詳しいコピーライターとか、あるいはカタログのことを1から10まで知っていますとか。コピーライターだけど写真も上手で、動画もそういうのも全部できますとか、何らかの付加価値を持った上で、かつある程度お客さんからの信頼を得られた上で独立したいなと思っていますね。
短歌の趣味は仕事に活きていますか
さっきのコピーの話で、誤解が生まれないように、はっきりと一つの意味で正確に伝わる文章を作るのがコピーなんですけど、短歌はその逆だと思っているんです。意味を膨らますものだと思っているので、読んだ人がいろんな方向に、その言葉からより変わったイメージを持ってもらうのが大事かなと思います。そういうふうに言葉を使いつつ、コピーと短歌で違う使い方ができる。コピーでやってはいけないことが短歌ではすごくよかったり、逆に短歌ではすごく説明的で面白くないものが、コピーではすごくわかりやすくていい文章だったり。その両方ができるのがいいかもしれないですね。
お金と仕事の関係についてどう思いますか
お金がないと、仕事はちょっとできないかもしれないですね。生活のために、というのはかなりあります。短歌はお金がなくてもできますけどね。
これから目指す人へ伝えたいことはありますか
これは自分で気づいてもらえたらいいと思うんですけど、かっこいい言葉を作るのではなくて、その裏側に、かっこいい言葉を作る前の情報整理など、いろんな作業があってのコピーライターだと思うんです。だから、キャッチコピーやかっこいい言葉が好きな人もコピーライターを目指したらいいと思いますし、そういうかっこいい言葉に関心がない人でも、コピーライターになる素質はあると思います。なので、興味を持ったらいろいろ調べてほしいなと思います。僕はかっこいい言葉を作る手前の作業を結構中心にやっているので、まだまだAIなどにもとられないような、人と関わることができる魅力のある仕事だと思います。