就活解禁がコロナ禍と重なり、内定取り消しを経て「拾ってもらった」不動産営業。恩義から続けたものの、数年後の自分が思い描けず転職を決意した。法学部で学んだ知識を活かせる法務の道を、半年考え抜いた末に選んでいる。
Q&A インタビュー
今のお仕事について教えてください
都内のIT企業で、企業の法務、法律に携わる仕事をしています。リーガルチェックといって、法的な書類や取引先との契約書類に一通り目を通す仕事です。契約書には、六法全書の第一条第何項といった、いろいろな法律に基づく同じような文言がずらっと書かれています。その文章を一つ一つ確認し、明らかにどちらかに有利に働き過ぎている文言がないか、誤字脱字がないかをチェックします。そのうえで上司から印鑑をいただき、フィードバックいただいた内容を取引先に送って、「これで大丈夫ですか」と確認する。こうした一連の流れをリーガルチェックといい、ほとんどその業務をやっています。
現在のお仕事へ転職したきっかけは
前職が不動産営業だったので、業界も職種も全然違うといいますか、営業から事務への転職ということになります。前職の営業を通じて、営業が嫌だったというよりも、事務職もやってみたいと思うようになりました。加えて、もともと法学部を卒業していたので、事務職をやってみたい思いと、少しでも勉強してきた知識を活かせる仕事はないかと考えたときに、法務という仕事があると知りました。そのとき初めて自分の中で法務を意識し、たまたま内定をいただけたことで、転職するという運びになりました。
前職に不動産営業を選んだ理由
不動産については、とにかく稼ぎたいという思いがありました。お恥ずかしながら、新卒のときにやりたいことがなかなか見つからなくて、どうせ同じ仕事をするならお金を稼ぎたいという気持ちがあったんです。では何をしようかとなったときに、不動産の営業を紹介いただき、ありがたく内定もいただけたので、そこに決めました。
転職してよかったと思う点はなんですか
良かったですね。仕事に対する価値観も、将来なんとなく思い描いているところも、今の職場のほうがイメージしやすいんです。その点でも、転職して良かったなと思います。
知識と実務のギャップについて
法律というものには、大学の勉強の中でしか触れたことがなかったので、それを実務で活かすところで、少しギャップがありましたね。今でもまだ慣れていない部分はあるのですが、特に入社して3ヶ月ぐらいまでは、知らないことも多く、学んだ知識を実際の仕事の中で活かすのは全然違うなと感じて、壁にぶち当たった瞬間がありました。
AIと法務の仕事について
AIがもう本当に、すぐ文章を作ってしまうので、少し任せている部分もあります。ただ、間違いがないかを人の目でチェックするという点では、まだAIに置き換わることはないのかなと、自分は今は思っています。とはいえ、これが5年後、10年後にどうなっていくのかは、まだわからないというのが正直なところですね。
社内の弁護士との関わりについて
お抱えの弁護士さんがいらっしゃるのですが、あまりにも優秀な方で、話についていけないといいますか。だからこそ、もっと知識をつけたり、実務経験の中でできることの幅を広げていって、より対等にお話できたら楽しいんだろうなと思います。特に弁護士さんは情報の処理速度が速く、仕事も本当に早くて、これが本物の弁護士さんなんだと実感しました。大学の在学当時は憧れの存在でしかなかったのですが、実際にお話しして痛感したところはありますね。
学生時代に戻れたらどうしますか
今戻れたら、法律の勉強をして、司法試験に向けた道に進んでみたいという思いがありますね。これは今の仕事に転職してから思ったことなのですが、前職の不動産営業の時は、毎日仕事に忙殺され、余裕もない中で、どんどん契約を取って稼いでいきたいという思いしかありませんでした。今は、大学生に戻れるのなら、もう少し勉強したいなという思いがあります。六法全書などを手にして、これを勉強したなといろいろ思い出す中で、もっとできた部分があったんじゃないかと、思い出すたびに過去の自分と照らし合わせて、いろいろ思うことがありますね。
今の仕事の楽しさについて
自分はちょっと特殊なのかもしれませんが、細かい文章を読むのがけっこう好きで、昔から本を読むのも好きなんです。あまり見たことがない書かれ方をしている条文や条項に目を通していると、「この企業はこういうひな型があって、こういう書かれ方をするんだな」と、企業ごとの性格が結構出ているような気がします。それを感じる時は楽しいですし、没頭して、時間を忘れて集中している瞬間かなと思います。仕事に向かうのが苦じゃないんです。また1週間を迎えることも、楽しみというとそこまでではないかもしれませんが、前職とは明らかに心持ちが違いますね。
業務で感じる緊張感について
リーガルチェックを主たる業務とする中で、チェックという仕事柄、ミスがないようにしないといけないので、結構今でも緊張感がありますね。何度も目を通すのですが、最初の頃はミスが多発してしまう時もありました。最初のうちは「しょうがないよね」と許されていたところもあったのですが、もうすぐ1年になる中で、そういったミスはしたくないという緊張感はあります。漢字の変換のミスだったり、法的処理なので、正確なものでないと信用問題になるというところで、厳しく見ないといけないという緊張感があります。
転職を考え始めたきっかけはなんですか
前職の時は、その会社しか知らなかったので、こういうものかという感覚でした。自分は卒業と就活が解禁されたときが、ちょうどコロナが始まってしまった時期と被ってしまいまして。行きたかった企業も別にあったのですが、次々と採用の取り消しになってしまい、どうしようという中で拾ってもらった、という恩がありました。なので、すぐに辞めるのは違うのかなという思いもありました。ただ、そろそろ自分の次のキャリア、今のキャリアの先で何年後に何をしているのかなと、ふと思った時に、この会社にいる姿が想像がつかなかったんです。そこから半年後くらいにはなったのですが、転職をずっと考えて、転職活動もして、という流れになりました。
仕事とプライベートの比率は
前職だと仕事が9割くらいだったのですが、今は50対50、もう半々ですね。仕事に割く時間もプライベートに割く時間も分けて、比較的精神的に余裕を持てるようになったのが転職後なんです。なので、プライベートも仕事も両立していきたいなと思っています。
転職を成功させる鍵とは
本当に今の環境を変えたい、脱却したい、もっと次のキャリアに向けてがむしゃらに向き合う、というと硬い言い方になるかもしれませんが、その思いが鍵だと思います。最終的には自分で決めるものなので、その思いが強ければ強いほど、より良い方向に向かい、転職が成功するのかなと自分は思っています。ただ、人それぞれ違うところもあるのかな、という考えもありますね。自分の場合は流れに沿ってという感じでしたが、もしその思いがなかったら、今も前の仕事を続けながら、毎週毎週思い悩んでいるだけだったのかなと思います。
仕事と幸せの関係とは
自分は前職で、本当に仕事に忙殺されていたので、契約をとってたくさんお金を稼ぐことが人生の幸せだと、ずっと考えていました。ただ、冷静に考えたときに、いつまでこの仕事ができるのかもわからない中で、もう少し余裕を持ってプライベートとも両立できたほうがいいなと思ったんです。それこそサッカーとか、もっといろんなことがしたいと思ったので。自分としての幸せは、やはり仕事とプライベートが両立できて、ちょうどよく、うまいバランスでできたらいいな、とそう考えています。
5年後に思い描く自分の姿は
5年後、自分が32歳、33歳になり、2031年の日本という中で、まずAIがどれだけ発達しているのかなと思います。その中で自分の仕事が奪われていないかな、という心配は少しあります。もう一つはプライベートでの家庭環境の変化で、自分に家庭ができるのかな、といったところですね。そういったところで、いいほうの変化があったらいいなと思います。
法務へ就職を目指す方へ
新卒で目指す方は、とにかく大学在学中に勉強しておいたほうがいいかなと思います。特別な資格がいるものでは、おそらく新卒のうちはないと思うので、法学部の方でも、別の学部で独学で勉強されている方でも、もし法務を目指すなら、勉強しておいて損はないかなと思います。中途入社される方は、現職や前の仕事がどういったものかはまちまちでわかりませんが、それなりに専門性が高くてニッチな職種ではあります。やり遂げる覚悟と、続ける継続力、そこに強く自信があるのでしたら、自分は面白い仕事だと思うので、お勧めしますね。
転職を迷う人へ伝えたいこと
明確に転職したいという想いがないまま、そこまで転職を考えていないのであれば、無理にしなくてもいいのかなと思っています。ただ、ずっと転職を考えていて、今の仕事にも身が入らない、そういった状態がずっと続いているようでしたら、今すぐにでも行動したほうがいいのかなと思います。待っていてもやっぱり変わらないといいますか、自分から行動に移さないと、環境やこれからのキャリアはどうしても変わらないと思うので。でも、その一歩を踏み出すことができたら、あとはもう自身の頑張り、努力次第かなと思うので、そこが一番大事かなと思っております。