テクノロジー
05月16日
「まずやってみる」スピードの中で力をつけたベンチャー時代は、今も糧だという。その上で、より大きな仕事を求めて大手へ。丁寧なチェックが品質を高めると気づいた今、どちらの現場も自分をつくったと静かに振り返る。
Q&A
インタビュー
今のお仕事の内容を教えてください
私は今、保険のシステムを扱っています。大手の代理店さんと保険の契約をするシステムの開発、そして開発した後の運用保守までを一連で手がけています。職種でいうならITのシステムエンジニアで、職位でいうなら、今はそのシステム開発のアプリケーションのパッケージリーダーを務めています。
これまでの経歴を教えてください
今の会社には中途で入りました。もともとずっとシステムエンジニアという職種は変わっていないんですけども、最初は上場していた会社に新卒で入りました。その後7年ぐらい経ってからベンチャーに移り、そこでは客先に常駐して5年ぐらいやりました。そして、また大手の保険会社の開発というところへ、今の会社に転職しています。
ベンチャーから大手に戻った理由は
もともとエンジニアは、手を動かして作業しているイメージを持たれる方が多いと思います。実際に手を動かしてアプリケーションを作り、それを納品するという仕事はあるんですけども、開発を進めていくにあたって、一人だけだとどうしても規模が小さくなってしまいます。いろんな人と一緒にやっていきたいと考えたとき、案件として仕事を取るとなると、ベンチャーでは小さな仕事しか取れませんでした。もっと大きな仕事がしたいと思い、転職活動をして、そのまま大きな会社に入りました。
IT業界を選んだきっかけは
シンプルに、今ITが好きなんです。仕事をしている時間はとても長いので、辛いと思いながら働くのは人生がもったいないという気持ちもありました。やるなら自分が楽しいと思えること、もちろん辛いこともありますが、やっていて楽しさを感じられる業界に行きたくて、自分にとって楽しい業界といえばITだったので、そこに絞っていきました。もともと学校は高専で、その後大学に編入したんですけども、ITはこれから先、業界として広がっていくだろうという見込みがありました。自分がやりたいことに加えて、ある程度給料も上がるだろうという見込みもあって、学生の頃からITに目星をつけていました。
働き始めて大変だったことは
もともと学校でやっていたのでプログラミング自体は知っていたんですけども、いざ仕事として作っていくとなったとき、学校で習った通りに作るのが正解ではありませんでした。お客さんにはいろいろやりたいことがあり、それに沿って作らなければいけないので、決まった正解がない中で作って出しました。でも「これじゃない」と言われてやりとりが続き、何回も繰り返し直していたので、夜遅くまで作業していたのがつらかったですね。
システム開発とは どんな仕事ですか
保険を契約するという場面で、個人のお客様がいて、契約が成立したときに、この保険を手で書くのではなく自動化したいという要件が出てきます。それを実際に、私たちのような開発するメンバーと、ビジネスパートナーさんが対応していきます。その際、お客さんから「何の情報を基に登録するのか」「今は紙で書いているけれど、それをパソコンで打ってもらえるようにしたい」ということであれば、ウェブサイトを作ります。ウェブサイトができて、ボタンを押して登録すると、その裏側にはデータを登録するためのデータベースがあります。どういう形でデータを入れるかも私たちが定義して、そこにデータが入ります。データが入った後は、保険が契約されたということなので、契約書のようなものもお客さまに渡さなければいけません。お客さまにはがきや証券を送付するための帳票出力のような機能も新たに作る必要があります。そうした部分についても、何を紙ではなく電子媒体のPDFなどで送るのか、といったところを「これだったらできますよ、この期間でできますよ」という形でご提案します。それをオーナーさんが予算を決めてOKを出せば、作り込んでいくという流れで進んでいきます。
仕事をしていて嬉しいと感じる瞬間は
もともとキャリアがある程度長いので、自分だけでなく、今は自分のチームメンバー、何十人かいるんですけども、その人たちに自分の技術をちゃんと教えたことで、できるようになりました。自分だけでなく周りのレベルも上がったんです。自分がアウトプットしたことで、みんなのレベルが上がったと実感できるのは、すごく嬉しいですね。自分の知識もちゃんと確立できていた、合っていたんだという自信にもつながりますし、チームメンバーもできるようになったことで仕事の効率も上がるので、やったという気持ちが出てきます。
忘れられない経験を教えてください
郵政民営化というのが昔あったじゃないですか。あのとき、お正月にちょうどシステムのリリースか何かで、初めて動かすという場面がありました。何回もテストをしていて、うまくいっていたんです。本当に12月31日から1月1日に、月が変わる瞬間に動作するというものがあって、何回もOKだったんですけども、本番のときだけ動かなかったんですよ。それで、年末年始、お正月三が日に出勤したというのが、今でも覚えています。「うわー」となりました。電話が鳴って、これはもう二度と味わえない、顔を真っ青にしながらタクシーで現場に向かったというのが、今でも忘れられませんね。
ベンチャーから大手に転職して感じたことは
もともとベンチャーから大手に入ったので、大手はスピード感という点で違いを感じました。いろんなチェックや稟議を回さなければいけないんです。さっとやれば1日2日で終わるようなものでも、部長の承認が必要だったり、管理職や複数人、全員の承認が必要という手続きがあったりして、「2週間かかります」と言われると、「いやいや、そんなに要る?」と思ってしまう。昔ながらのノウハウで「開発の仕方はこうだ」という独自のルールがあって、それに従わないとダメというところもありました。ベンチャーならすぐ終わるのに、と感じて、慣れるまでは少し大変でしたね。
ベンチャー時代はどうでしたか
あちらはスピード重視だったので、「できるか」と言われれば「できますよ、すぐできます」という感じでした。ベンチャーで対象とする相手も、もちろん超大手もあったんですけども、「まずどういう感じで作ってみたいか」「マーケティング戦略としてこういうことをやってみたいので作ってもらえないか」という形で、比較的小さなものが多かったんです。すぐに作ってほしいというスピードを求められていたので、いろんなチェックはせずに、まずやってみるということが多かったですね。
結局どちらが良いと感じましたか
結局のところ、大手の方がいいかなと思っています。なぜかというと、チェックをしている間に、自分の品質を見直せるからです。こう作っていたけれど、人間なのでやはり抜け漏れがあり、「こういうところをやっておけば良かった」という振り返りを通じて、もっと品質が上がっていく手段に気づけるんです。大手のチェックは必要だからやっているんだと気づいたので、大手ですね。
最も大事なスキルは何だと思いますか
コミュニケーション力だと思います。その理由は、最初に言ったように、オーナーさんがいて、私たちがいて、ビジネスパートナーさんがいるという構図の中で、お客さんが何を求めているのかをちゃんと聞けるコミュニケーション力、そして、その情報をもとにビジネスパートナーさんに「こう作ってほしい」と伝える力が必要になるからです。技術は後からちゃんと勉強すればいいんですけど、このコミュニケーション力は本当に培っていったほうがいいと考えています。エンジニアは「作る」ことが仕事だと思われがちですが、作った後に使ってくれる人がいるからこそ作るので、その人が何を求めているかが大事なんです。例えば「ブランコが欲しい」と言われたとき、エンジニアはブランコを作るんですけども、木の横に作って座れないようなブランコを作ってしまったら困ります。だから、どんなブランコがいいですか、誰が乗りますか、どんなふうに乗ろうとしていますか、何年持たせますか、といったことを聞けないと、適当なものを作っても、作ることはできるけれど欲しいものにはならない、という結果になってしまいます。まずはコミュニケーションありきで、それをもとに作っていくという形になるので、まずはコミュニケーションなんです。例えば複数人でプロジェクトを回すとき、10人でやるような仕事であれば、コミュニケーションできる人がまず3人は必要で、技術的なところをやる人が7人ぐらい必要です。その3人が、どんな形で作っていくかを、作っていく人にちゃんと伝えられれば、たぶんうまく回ります。逆に、この3人のうち1人でも体調を崩して欠けてしまうと、プロジェクトとして結構大変なことになります。作っていたものが実は違っていたり、直したりといったことが起きて、おかしくなってしまうんです。やはりコミュニケーションは本当に大事で、技術的なところもコミュニケーションありきだと思います。
IT業界に向いているのはどんな人ですか
泥臭いことをやってでも、ミッションをクリアするためにずっとあがき続けて、クリアまで目指せる人が向いていると思います。「できない」と言って諦めてしまう人は、少し向いていないと思いました。「できない」と言うにしても、何か根拠があって言うべきで、なぜできないのか、これをクリアできる方法は何かないのか、とちゃんと、ああでもないこうでもないと色々考えて進んでいける人は、IT業界に非常に向いていると思います。
仕事とプライベートの割合は
今、私の中では仕事が人生の8割ぐらいになっていますね。残りの2割は家族や、プライベート、子供の成長などもあるんですけども、今は仕事が結構好きなんです。私は自宅でのリモートワークが多く、全部会社に出勤しているわけではなくて、自宅でも仕事をしています。そうすると、子供から「仕事がんばってね」とか「どんなことをしているの」と聞かれたりして、自分の背中を子供にも見せることができています。だから結構仕事の比率を高くして、「こんなに頑張っているよ」という言い方は変かもしれませんが、色々やればもっと報われるんだということを子供にも示せるので、仕事の割合は高めですね。
5年後どうなってると思いますか
事業部長になっていますね。もちろん高い壁があるのはわかっていますし、今の事業部長がどんなことをやってきたかも見ています。ただ、それに自信を持って、とりあえず行けるようにがんばってはいます。できるかどうかは置いておいて、部長も失敗はしているので、失敗してもいいからやってみるということは、この会社に入ってから結構わかりました。大変かもしれないけれど、とりあえずやってみる、「部長になる」と言って自分のモチベーションを上げてやっていけば、意外となれると思います。
IT業界を目指す人へメッセージを
さっき言ったコミュニケーションももちろん大事なんですけども、まず、やり抜く力がどんな場面でも必要になると思います。特にITはわからないことが多く、正解が必ずしも一つとは限らないし、求められているものもたくさんあります。ですから、まずはやり抜く力をちゃんと培ってきてください。相談すれば、先輩もいっぱいいるのでいくらでも相談できます。では、一緒にやっていきましょう、というところです。
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