医療・福祉
05月09日
技術より先に、相手との信頼関係を築くこと。理学療法士の伊藤さんが何より大切にするのは、人として向き合う姿勢だ。自分たちは先生ではなく伴走者——少し後ろか隣を歩くように、相手のペースに寄り添う。人に興味を持てるかどうかが、この仕事の前提だと語る。
Q&A
インタビュー
今のお仕事について教えてください
今、私は理学療法士として働いていまして、訪問看護ステーションから訪問リハビリの仕事をしています。一言で言うと、リハビリ、病院とかご病気された方、怪我をされた方を対象にしたリハビリを専門にする職業ですね。私は理学療法士という国家資格なんですけども、あとは作業療法士っていう同じようなリハビリの資格があったり、あとは言語聴覚士、言葉ですね、というので大体概ね3種類ぐらい、医療系のリハビリ職の国家資格っていうのがあります。
どんな場所で働くことが多いのでしょうか
大体、まあ多いのは病院とか、あとは高齢者の施設ですとか、あとは街中のクリニック、小さな病院もそうですし、あともう少し行くと子どもさんですね、小児の施設とか。あとは少ないですけど、スポーツ分野とかですね、オリンピック選手とか、プロの選手の同行とかというのがありますね。
資格はどうやって取得するのでしょうか
まず、資格をとるために、養成校というのが全国に、大学なり専門学校というのが3年か4年であるんですけども、そこに行って卒業したときに、受験資格が、というのが初めてもらえて、それで国家試験の受験という感じです。
この仕事を目指したきっかけは
私の祖母が足が痛くて、もともと足が、両方の股関節があまり健康じゃなかった状態があったので、人工関節が入っていて、というのを幼いときから見ていたんですけど、そのときは何も、足が悪いぐらいだったんですけど、そういう職業があるというのを知りまして、いいなぁと。私は実は、この仕事になる前はスポーツクラブのインストラクターをやっていたんですけども、そこでも、スポーツクラブに来ていらっしゃる方でも、やっぱり膝が痛い、腰が痛い方が多かったので、それがすごく違和感があって、よくなろうとして来ているけど、まだ痛みが取れないみたいな。なので、社会人になって働いて3年ぐらいして、学校に入り直して、20代半ばぐらいに専門学校に入ったという感じですね。スポーツクラブで運動を教えていたんですけども、なんか痛みが引くことっていうのは、正直その時はあんまり感じなくて、もうちょっと深掘りして体のことを知らなきゃいけないかな、ってのが、当時は何も資格を持っているスタッフっていうのはほとんどいなかったので、勉強し直してみようかな、っていうのがきっかけだったのかなと思います。
特に神経を使うのはどんなことですか
一番やっぱり、相手の方っていうか、まあお相手が人なので、その、まず、リハビリをする以前に、かかわり方とか、その距離感かもそうかもしれませんけど、信頼関係を築くっていうところがないと進めないっていうところがあるので、そこはまずは気をつけなきゃいけないところかなとは思います。技術があるスタッフがいても、リハビリできないと何もできないの、というか、もう来なくていいって言われちゃうと手も足も出ないので、そこはやっぱり、まあ今でもそうですけど、課題なところではあります。
この仕事で良かったと思う瞬間は
患者さんや利用者さんが良くなるっていうのを、こっちも含めてなんですけど、ご自身で実感されて、これができたよとか、前より良くなったよっていうのを思ってもらった瞬間は、すごく嬉しいですね。ちょっと前まで、こう、何て言うんですかね、考えてもなかなかうまくできなかったアプローチとか、こうやったときに効果が出たときに、自分自身も少し成長したのかなっていうのは、こっち側の問題としても嬉しいっていうのはあります。
この仕事の面白さはどこにありますか
私自身は、やっぱりいろんな方、本当にもう、さまざまなタイプの方と関わるので、それ自体は面白いです。その、なんていうんですか、怪我してようがしてまいが、あの、人間の、なんかそれぞれの考え方とか、もうこれまでの生い立ちとかも含めて、そういうお話ししていく中で、リハビリと離れちゃうんですけど、でも、そういうバリエーションがあるのは楽しいんですね。
きついと感じるのはどんなときでしょうか
さっきと逆で、こう、かかわっていっても、なかなか結果につながりにくかったり、自分の中でうまくできないなって思ってしまったり、あとはその、リハビリ自体の必要性を感じてもらえなかったりとか、まあそうですね、ご自身自体が、よくなろうっていう思いを塞いじゃったときとかは、同じ方向を向いてないと、一番そこに苦労します。
働き方や勤務時間について聞かせてください
今は、そうですね、お休みもしっかりあるので、そこの面で、プライベートに食い込むほどの業務量があるというわけではなくて、まあ決まった業務時間内で、残業はそんなにないですね。業界としても、在宅の医療の分野では、リハビリに関してはそもそも夜勤というのはまずないので、今、多分私が伝えていることで合ってるかなと思うんですけど、ただ病院になってしまうと、またちょっと形が違うかなと思います。平均でですね、だいたいですけど、だいたい一日6件くらいですかね。はい、なるべくその間の時間は移動時間として確保するようにしていて、万が一遅れた場合は、どうにか調整はしたりとかするんですけど、あと毎日6件ではなくて、例えばある曜日はちょっと多くなったり、あと少なかったり。一回にだいたい1時間が多いんですけど、保険の制度によって医療保険でやっている方とか、介護保険でやっている方もいるわけなんですけど、その時間が若干違ったりするので、40分で終わる方もいるとか、うまく調整して、なるべく収まるようにしています。
資格取得後も学び続けるのですね
最近はなかなかできてないんですけど、やっぱり勉強会や研修会に行ったりとか、あと新しい文献を見たりとかっていうのは、もう日々ですね。資格を取ってからでも情報も変わっていくので。これはもう個人の好き好きな部分によってなんですけど、例えば呼吸器系の専門的な資格があったり、あと心臓に強いリハビリをするための資格があったり、例えば糖尿病とかですね、それにも特化したリハビリが得意な方はそういう資格があったり、いろいろプラスの資格は取る方は取ります。そうです、前は呼吸器系の資格を持っていました。ただ更新はしなかったので、今は資格としては持ってないんですけど、必要なものだったので、はい。
開業や資格の位置づけについて
私たちの資格でも、開業している人も中にはいるので。ただこれちょっと、資格の話なんですけど、理学療法士っていうのは、あの、資格の中でも名称独占って言って、名前を使っちゃいけないんですよ。だからこの仕事って正直、どなたもできるんですよ。やっていいんですよ、法律上は。ただ名前を名乗っちゃいけないっていうだけなので。ちょっとわかりづらい。お医者さんの行為とか看護師の行為ってのは、これ業務独占って言って、やっちゃいけないですよ、一般の人は、資格がないと。私たちの仕事ってのはやっても問題ないんです。今からやっても全然問題ないです。そうです、言っちゃいけないだけなので。言っていいっていう資格だけなんですよ。別に誰にも許されている行為をしてるだけなので。
収入面についてはどう感じていますか
生活ができないわけではないので。ただ、医療全体だと思うんですけど、やりがいって言葉に隠されちゃってるような、人に寄り添う思いやりとか、綺麗な言葉の中に包まれちゃってるような、だからいいでしょ、みたいなところが正直ある感じがあるので。高いかどうかは分かんないですけど、今のところはやりがいと収入は合ってるんじゃないですか。そんなにすごい不満があったら、また別に行くと思うんですけど。在宅の訪問と病院とで全然また、クリニックでも全然体系が違うので、一番在宅は高いほうかもしれないです。病院はちょっと低くて、もっとクリニックの外来だともうちょっと低いような傾向になります。
別の道に興味が湧くこともありますか
私、この仕事が嫌いになって、とかというよりは、むしろ違う仕事とか、違う世界を知らないな、というのがあるので、それを見たいという方が強くて、思うことはあります。それを、全くこの同じ仕事を、これから自分が歳を重ねていく中で難しいと思うんで、そこに戻るってことはないんですけど、ただその知識を生かして、今のキャリアを生かして、別のことをしようとは思っています。
あなたにとって仕事はどんな存在でしょう
人生の中で、割合結構大半かなって思います。占めてる時間も長いですけど、そうですね。私でも、生活するために必要な手段でもあるので。あとは、社会とのつながりみたいな、何も仕事しなくても生活できたとしても、家で一人でずーっと何もしないでいることができるかっていうと、多分できないですよね。
5年後はどうなっていたいですか
5年後、どうなってるんでしょう。理想としては、今は仕事に関しては大半が勤めているので、意思決定の部分では、ほぼ勤めているって形なんですけども、もう少し自分の考えとか自分の裁量で決められる部分が増えたらいいなと思っています。自分で何かを起こしたりとか、今の仕事を少し減らして、自分でもできる場が自分で作れたらいいなと思っています。
この仕事を目指す人に伝えたいこと
私が、この仕事、まだなる前に、知らなかった時に、どんな仕事だろうって、インターネットで調べたら、そしたら、もうこの仕事をしている方が答えている場面があったんですけど、どんな人が向いてますか、って質問に対する答えが、人が好きな人って書いてあったんです。私は、そんな答えなんだって思いながら、よくわからなかったんですけど、今、その答えがすごくしっくり来る場面がやっぱりあるので。やっぱり、お伝えした通り、お相手が人なので、そこがそもそもないと、その先進まないっていうのがあります。やっぱりそうですね、第一には人が好きというか、人に興味があるというか、それは本当に前提になってくると思います。すごくお金稼ぎたいとか、とかになってくると、たぶん違ってくるのかもしれないんですけど、何か、人に対して興味を持って、でも、自分たちは先生じゃないので、あくまで伴走者みたいな形でお手伝いするだけなので。よく言われるんですよ、リハビリの先生って言うんですけど、自分たちは先生ではないと思ってるので。なんか一番、すごく遠くの先頭で引っ張るわけではなくて、ちょっと後ろか隣ぐらいで歩くようなイメージですかね。
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