「どんな人にも愛を持って接すれば、必ずいい方向に進む」。利用者と向き合う日々のなかで、相手の気持ちを汲むことの難しさと大切さを知った。つい利己的になりそうな自分と向き合いながら、関わる人すべての幸せを願い続ける。その姿勢の根っこにあるものを聞いた。
Q&A インタビュー
現在のお仕事を教えてください
はい、就労継続支援B型です。一般企業で働くことに不安がある方が、自分のペースで働く練習をしたり、経験を積んだりできる福祉サービスです。仕事を通して生活リズムを整えたり、社会とのつながりを作っていきながら、自分らしく働けるように支援していくお仕事になります。
この仕事を始めたきっかけは
元々は、今の千葉支部の部長が沖縄の同級生だったんです。同い年のその子がこちらに事業の立ち上げに来るということで声をかけてもらって、「もしかしたら向いているかもしれないから、やってみないか」と言われて、こちらに来ました。見学してみると楽しそうでしたし、友達もいるので、楽しくやっていけそうだなと思って働き始めた、というのがきっかけです。
もともとはどんな仕事を考えていましたか
元々は全然違っていて、そもそも何の仕事をするかということ自体、考えていませんでした。声をかけてもらう電話が来る前までは、海外に行こうと思っていて、海外に行けばビッグになれるんだろうな、という感覚でいたんです。何か飛び抜けたことをしたいと思っていたので、この仕事を志望していたわけではありませんでした。もっとワクワクしそうな、別の仕事を探していた時期でした。
障害のある方と関わってみてどう感じたか
正直、最初は全くわかりませんでした。障害のある方と関わることが、これまでの人生であまりなかったので、どう関わればいいんだろう、という状態でした。利用者さんがいないと成り立たない職業でもありますし、その利用者さんにどう満足してもらうのか、どうすれば生きがいや楽しさを見出してもらえるのかを、日々悩みながらやってきました。障害を持っている方がいらっしゃるので、調子が悪くなったり、荒れてしまったりするときもありましたが、そういうときはいろいろな経験をされている人たちから、「もっとこうした方がいいんじゃないか」と教えてもらって、何とか今までやってきた、という感じです。
始めたころ 特につらかったことは何ですか
一番しんどかったのは、利用者さんとの関わり方ですね。これまで相手の気持ちに立って話すということがなかなかなかったのですが、この職業に就いてからは、「利用者さんは今何を思ってこれを話しているんだろう」と考えるようになりました。そこが最初はかなりキツかったです。相手の気持ちになるということが、本当にキツかった。今までの自分の生き方では、そこまで相手の気持ちを汲み取って話すことがなかったので、そこがしんどかったなと思います。
利用者さんはどんな作業をしていますか
利用者さんがやっている仕事は、内職や革細工、あとはバットを使った作業などがあります。プロ野球選手や大学の野球チームの方たちから折れたバットをいただいて、そこから靴べらを作ったりしているんです。それをどう支援するのかというところが僕たちの仕事で、利用者さんが何をしたいのかという希望に沿って、できる限りのことをやっていく、という感じですね。
最初の大変さはどう変わっていったか
最初は大変です。理解しようとしてもなかなかできない部分があるので。でも、「こういう人たちなんだ」「こういう人なんだ」とわかってくると、すごく楽しさに変わっていきます。利用者さんに言われたことや周りの意見は、ネガティブに捉えがちなんですけど、それを「どうすれば少しでもいい方向に進められるか」と変換できるようになると、すごく楽しいのかなと思います。
やっていてよかったと思う瞬間は
一番最初の頃に感じたことなんですけど、ミスをしてしまったり、利用者さんに迷惑をかけてしまったりしたときに、「大丈夫だよ」「ミスしても大丈夫だよ」と声をかけてもらえたことが、すごく嬉しかったですね。日々関わっていても、なかなかそう言ってもらえることってないと思うんです。利用者さんご自身も、人に目を向けられないくらいしんどい状況であるにもかかわらず、こちらを気遣ってフォローしてくれる。そのことに僕はすごく感動しましたし、そこにとても助けられた部分もありました。
この仕事の面白さはどこにありますか
可能性が無限大だなと感じる部分があるんです。例えば仕事をしに行くにしても、施設の中だけではなく、施設の外に出て就労させてもらったり、スーパーで働かせてもらったり。利用者さんはどこまでもできるんだ、というところを、利用者さんも職員も一緒になって考えていける。それが面白いのかなと思っています。外に仕事をもらいに行って、実際に作業を見てもらうとわかるんですけど、細かい作業も結構できるんですよ。行けばやってくれる人もいます。障害があるとなると、どうしても最初は偏見から入ってしまって、「できないんだろうな」と思われることが多いのですが、やってみると「こんなにできるんだ」と思うことが多い。掃除一つにしても、スーパーの袋詰めにしても、そういうことができているんです。
精神的にきついと感じるのはどんな時か
利用者さんの問題を解決できないときは、職員もみんな悩みますし、「どうしていけばいいんだろう」と考えます。正解がなくて、一人一人いろいろな感性を持っていますし、昨日はこうだったけれど今日はこう、ということもあります。本当はこちらの方が合っているんだろうなと思っても、本人が望んでいない。逆に、本人が望んでいることを叶えてあげたいと思っても、客観的に見ると難しい、ということもあります。本人の希望を叶えてあげたいけれど、できない。その裏腹な気持ちは、みんなが悩んでいるところだろうなと思いますし、しんどいところです。
働き始めて驚いたことは何か
全てに驚きましたね。わからなかった部分が多かったので、「あそこまでやるんだ」「こういうことをするんだ」と、本当に全てにおいて驚きました。例えば利用者さんの相談で、「その話は昨日も聞いたよ」という内容でも、今日もまた聞いてあげる。これをやる意味があるのかな、と最初は思っていました。ただ、利用者さんからすれば、不安だから聞いてほしいんですよね。少し話を聞いてあげることで、本人は「この人は聞いてくれた」と感じてくれる。どこか寂しさを抱えていたり、いろいろな過去があったりする利用者さんもいらっしゃるので、しっかり話を聞いてあげて、「よし、今から一緒に頑張っていくか」と声をかけると、すっと受け入れてくれるんです。そこまでやらないといけないんだ、というところには、すごく驚きました。
この仕事に必要な力とは何か
僕らの会社でもよく言うのですが、会社の理念が「関わる全ての人を幸せに導く」というものなんです。つまり、愛を持って接するということですね。どんな人にも愛を持って接すれば、必ずいい方向に進む、という思いがあります。この愛というものは、みんなに伝えていきたいと思っていますし、それがこの仕事にすごく必要な力かなと思います。
自分のスキルアップで意識することは
愛を持って接するというのは、利用者さんに対しても、職員に対しても、それこそ家族に対しても同じで、常日頃からなるべく意識するように心がけています。ただ、どうしても自分が一番可愛いので、楽をしたい、少しでも楽な方に走ってしまうときもあります。だからこそ、常に愛を持って接することは、今後も意識し続けないといけないですし、スキルアップのためにも、そこに全てが詰まっているのかなと思っています。そこを常に意識している、という感じですね。いろいろ勉強もするのですが、愛を持って接するというのは、やはり難しい部分もあります。どうしても利他ではなく利己的になってしまう、というところですね。
将来のビジョンや願望を聞かせてください
明確なビジョンは、正直まだ見えていません。ただ、願望としては、今置かれているこの環境で、一緒に働いてくれている人たち、それは利用者さんも含めてですが、その人たちが常に幸せな状態であってほしい、というのが一番です。幸せは人によって本当に幅広くて、毎日朝ご飯に白米を食べられるのが幸せ、という人もいるかもしれません。それくらい幅広いものですが、少しでもその幸せを感じながら働けている人が自分の近くにいる、そして会社全体がそういう環境になっている。そんな状況を作りたいですし、作っていきたいというのが一番の願望です。もう一つは、それをしながらも会社として事業を拡大していくこと。そして自分のプライベートでも、充実した生活ができるようにする。これらを同時にやっていく予定です。
この仕事を目指す人へメッセージを
どの仕事に就くにしても大事だなと思うようになったのが、愛です。愛は人間関係を築く上ですごく大切なことだと思いますし、愛を持って接することで、何事も全てうまくいくと僕は思っています。僕は就労継続支援B型という福祉の仕事をやらせてもらっていますが、これはどんな職業においてもすごく大事なところだと思います。今からでも、年齢が50歳でも60歳でも、10歳や12歳でも関係なく、自分が意識しようと思えばいつでもできることだと思うので、ぜひそこを頑張ってみたらいいのかなと思います。