働き方を何度も考え直した末に産後ヘルパーへ辿り着いたのは、障害のある息子との日々がきっかけだった。「今の自分に一番合うものは何か」。過酷さの中でも世界を広げてくれた息子への感謝が、支援という仕事へ背中を押した。
Q&A インタビュー
今のお仕事について教えてください
いま行っているのは二本立てで、産後ヘルパーと広告のモデルをやっております。産後ヘルパーをわかりやすく言うと、お母さんが赤ちゃんを産んでご自宅に帰られてからサポートする人のことです。食事の支援やお掃除の支援、あとは赤ちゃんのお世話などを主に行っています。
2本柱で仕事を始めたきっかけは
いま5歳の子供がいるのですが、働き方を考え直したときに、今の自分に一番合っているものは何だろうと考えていました。うちの子供には少し障害がありまして、障害児を育てる上で、自分が役立つ存在になれるものは何だろうと思ったとき、産後で一番支援を必要としている方に寄り添うことができたら、今の自分には一番適しているのではないか。そう思ったのが産後ヘルパーを始めたきっかけです。広告のモデルに関しては、もともと芸能事務所に所属していたご縁もありまして、自分に必要なこと、求められていることは何だろうと考えたときに、そのご縁も活かしてできるのではないかと思ったのがきっかけでした。どちらも自分を必要としてくれる環境なのかなと思い、この2本柱で仕事を始めることになりました。
具体的にどんな支援をするのですか
産後ヘルパーは、お母さんお父さんの悩みに寄り添う仕事なので、まずご要望がそれぞれ違います。赤ちゃんのお世話を頼みたいという方もいれば、お母さんはゆっくり休みたいのでお父さんに代わってご飯を作ってほしいという方、お掃除をお願いしますという方もいて、本当にさまざまです。例えば赤ちゃんのお世話であれば、沐浴などの入浴作業、ミルクをあげたりおむつを替えたり、遊ばせたり、抱っこや寝かしつけを頼まれることもあります。お掃除支援や食事の支援は想像通りで、ご飯を作ったり、指示のあった場所を掃除したりといった内容になります。
仕事を始めたころ大変だったことはなんですか
どこまで求められているのかがわからない、というのがありました。何でもそうだと思うのですが、例えばお掃除で「お風呂場を洗ってください」「洗面所を洗ってください」と言われても、本当に浴槽だけでいいのか、どこまできれいに磨けばいいのか、その加減がまだ難しくて。それがお子さんのことになるととてもシビアですし、神経をすり減らすといいますか、大切に扱わなければいけないものなので、何を求められているのかを探る部分がすごく難しかったなと思います。
支援で大切にしていることは
赤ちゃんを扱う仕事なので、もちろん赤ちゃんのことが最優先なのですが、パパとママも睡眠不足だったり、ママはホルモンのバランスや体調が戻っていなかったりと、精神的にも体力的にもすり減っている状況です。ですから、何に悩んでいるのかをできるだけ聞くようにしています。「眠れていますか?」「ご飯は食べていますか?」「赤ちゃんのことで困っていることはないですか?」と親身に伺って、解決策を提示できるときは提示するのですが、難しい部分もあると思うので、できるだけ寄り添って「今が一番つらいと思いますが、頑張りましょう」と声をかけています。そういうところに隠されたニーズがあると思っているんです。なかなか胸の内を言えない方もかなりいらっしゃると思うのですが、ちょうど精神的にも肉体的にも限界が来ているタイミングだと思うので、寄り添ってくれる人の存在が本当に大切だと感じます。私自身も里帰りをして、母や主人、周りの人にすごく助けられました。だからこそ、ご両親が遠かったり、ご主人が忙しかったりする方に、いかに寄り添えるかを大切にしています。
仕事を始めたころと今でどんな変化がありましたか
人様のおうちに上がるというのが、まず第一関門で、お互いに構えてしまう部分があると思います。最初はそこが引っかかっていたのですが、今はもう少しフランクに接してもいいのかなと、心構えが変わってきました。あまりかしこまりすぎても相手も身構えてしまうので、雰囲気づくりを大切にしたいと思うようになりました。1年経ってみて、上達というのもおかしいですが、変わってきたなと思います。最初はすごく緊張して、かちこちだったのかなと思います。
仕事の面白さはどこにありますか
他人のお家にお邪魔するというのが、最初はまず楽しみだなと思っていました。ご依頼主の要望や希望を伺っているうちに、話がそれたりもしながら、本質的にはここが悩みなんだろうな、というのを自分なりに見つけられたときは、すごく面白いなと思います。
つらいと感じるのはどんな時ですか
両方の仕事に共通して言えることですが、言われたことができなさそうなとき、100%応えられないときは結構きついですね。精神的にも来ますし、それが肉体的にも来ることがあります。時間的な要因で、個人的に要望に応えられないこともありますが、要望に応えられないということが一番精神的に来ます。すごく簡単な例で言うと、お庭の掃除とここの掃除とここの掃除を2時間以内でお願い、と言われて、どう考えてもキャパオーバーのときには、「ごめんなさい、それはできません」と前もってお断りした上で、できる限りやりたいので「優先順位を教えてください」とお伝えして、できるだけ応えられるように努めています。
特に嬉しかったエピソードは
第2子をご出産された方のお宅で、小学生の長女さんがいらっしゃって、私が作ったご飯を「給食みたいでおいしい」と言ってバクバク食べてくれていると、パパの口から聞けたときは本当に嬉しかったです。それ以降リクエストをいただいて、先ほどお伝えしたチーズハンバーグに至りました。次回は、夏なのに鮭の入ったクリームシチューが食べたいそうです。可愛いなと思って、頑張ろうと思っています。
報酬についてどう考えていますか
正直、もう少しもらえたら嬉しいなという部分はありますが、両方とも仕事に誇りを持っているので、最終的にそこが合致したらいいなと思います。今は特に不満はありません。ただ、産後ヘルパーはすごくやりがいのある仕事なので、もう少しお給料を上げてもらったほうがいいんじゃないかなとは思います。
将来どんなことに取り組みたいですか
今はとても、心も体も満たされた状況で仕事をしている実感があります。このまま仕事を続けていきたいですし、それがキャリアアップにもつながるのかなと思っています。将来的には、3本目の軸になるかはわかりませんが、主人と話しているのが、障害児向けの組織というか、どういう形になるかはまだ考え中なのですが、障害児向けの何かコンテンツの提供にも携わりたいということです。広告モデルや産後ヘルパーの仕事のきっかけになったのは、私は息子だと考えています。障害児を育てるのは本当に過酷で、なかなか分かり合えない、分かってもらえる人が少ない環境です。その中で、今は主人と試行錯誤しながら色々取り組んでいて、新たな知識の吸収だったり、今まで接したことのない世界に連れて行ってくれたりと、本当に息子には感謝しています。だからこそ、ママとパパの支援になるような場所、何か一つに集約されたコンテンツやコミュニティの場を提供できないか、と主人と話し合っています。まだ具体策には行き着いていませんが、漠然とそういった方向で何か運営できたらいいね、と話しています。
どのような経験がその原動力になっていますか
本当に息子のおかげで世界が広がって、私も主人もすごく感謝しています。息子に優しくしてくれるコンビニの店員さんは、いつも息子がオレンジジュースとチキンを食べているのですが、息子が言わなくても取りに行ってくれたり、朝挨拶してくれる工事現場のお兄さんは、いつもハイタッチしてくれたりするんです。息子がいなかったら決して交わることのなかった世界線だな、と思っていて、そういった部分を共有できたらと思います。障害児を育てていると、どうしても親が負の方向に閉鎖的になってしまう部分があるので、何か共有できる場、情報の共有でもいいですし、具体的にみんなで会うのでもいいので、つながりが持てるところが必要なのではないか、というのが主人と行き着いた考えです。子供を生む前は、私も主人もある程度理想があって、歩けるようになったらこういうところに行きたい、とか。うちの子は男の子なので、主人は戦隊もののヒーローショーに一緒に行きたいとか、虫取りをしたいとか、そういう思いがどうしてもありました。障害児なので、できる部分とできない部分がどうしてもあります。できてもできなくても、最初は少し悲観的に思う部分があったのですが、今となっては「できなかったけど、また違うルートができたよね」と、すごく選択肢が広がったと、私も主人も考えています。
働き方に悩む人へ伝えたいことは
私も何回もキャリアをチェンジしたり、働き方をすごく考えて見直したりしてきた人間です。まずは自分と向き合って、何がしたいのか、本質的に何を求められていて、何がしたいのか、何ができるのか。そこに落とし込んだ上で、実際にどれくらい働けるのか、条件の見合うところがあるのか、もちろん精査した上で、まずは行動するべきではないかなと思います。行動しないと何も進まないので、まずは行動しよう、前を向いて行動しよう、ということです。