ホスピタリティとは「感動体験を設計して提供すること」。そう言い切る背景には、20年におよぶ海外での経験がある。社員が楽しめてこそお客様に伝わると信じ、若手を我が子の友人のような気持ちで育てる。嫌だったことほど財産になる——つまずきを重ねてきたからこそ語れる、その落ち着いた仕事観を語ってくれた。
Q&A インタビュー
今のお仕事についてお聞かせください
肩書きは、愛のある鬼コーチと題しまして、人材育成・若者支援をしております。大きく分けて2つございまして、1つは大学で教えています。日本の大学と、あと台湾の中国文化大学というところでも登壇する機会を得まして、ホスピタリティマネジメント、台湾に関しては日本での就職についてなどの講義を持っております。もう1つが、人材育成コンサルタントと名乗りまして、主に若者の育成をしております。さらに今は外国人社員が増えているので、外国人社員が日本に馴染めるように、日本のビジネスマナーを教えたりしております。
現在の仕事を始めたきっかけは
もう偶然が偶然を呼んで、という感じです。私、日本を20年離れたんですね。バブル崩壊後、日本で航空会社に入りたくても募集がなくて、運よくタイのバンコクに拠点があるタイ国際航空に入りまして、そこで6年間空を飛びました。そして台湾人と出会って台湾に移り住んで、日本に帰ってきて仕事を探しても、2013年、14年って、なかなか仕事が見つからなかったんです。それで、始めは矯正下着屋さんでアルバイトから始めて、その中で、娘が通っている学校の事務のスタッフの方から、その方のご主人が大学で学長さんをされていて、そこの大学で教えてみないかということをいただきまして。そこからひょんなご縁で、講師という楽しい世界を知ってしまいました。
あなたにとってホスピタリティとは何ですか
よく、おもてなしとか、そういう言葉がホスピタリティと言うと連想されると思うんですけれども、私が思うホスピタリティとは、感動体験を設計して提供する、これがホスピタリティだと思っています。感動体験、例えば思いもしなかった良いことや嬉しかったことがあってサービスしてもらうと、それがすごく感動して、ずっと思い出に残る。そのような仕掛けづくり、相手の喜ぶ顔を自分も楽しんでしまうという形がホスピタリティです。感動体験の設計と提供を仕組み化して、それをスタッフが再現できるように持っていくのが私の研修です。
若者を育てるうえで大切にしていることは
今の若い方たちに押しつけると、疲弊してやめちゃいますね、定着率が。いかにして楽しむか。社員が楽しまないとお客様にも伝わらない。なので、いかにして自分が楽しむか、どうやったら楽しめるかということを主に、スタッフを勇気づけたりしています。ただ、愛のある鬼コーチっていうのは、このキャッチーな肩書きが欲しかっただけで、ものすごく愛情をかけて接しています。というのは、私、今年25と22になる娘がおりますので、全ての社員が娘の友達に見えてしまうので、母親の気持ちで接しております。
講師業で法人化したのですね
講師業に目覚めたのが、お声がかかったのが2015年で、大学で教えるようになりました。そこで教えている中で、2018年、19年あたりから、企業さんにいろいろと、人材育成の、若者の指導に入ってくれということを言われるようになって。あら、私でも仕事できるのかと勘違いしまして、その時、個人事業主の届けを出して。もうオリンピック前だから、すごい仕事がいっぱい来て、あらーと思っていたら、コロナという予想もしなかったものが来て、全部白紙になりました。見事に白紙になりました。それで、私もこういう個人事業主とかは考えなく、大学で教えて細々とやっていこうと思ったんですけれども、とあるきっかけで、SNSで流れてきた「売れない研修講師が稼げる方法」という広告を見て、私のこと言ってると思って入った講座で、仕事の取り方を教えてもらったら、仕事が取れるようになりまして。そして53歳で法人化しました。
研修はどんな場所で行っているのですか
接客の指導で入るときが多いんですけれども、それは本当に様々で、例えば私、美容クリニックに関して、多分日本一こなしてると思うんですけれども、美容クリニックって今どんどん開業をされていて、もう建設ラッシュというぐらいなので、オープニング前の工事中の入り口である時もあります。スタッフが10人くらいだから、私のパソコンを開いて、私のスクリーンをこう見せながら、そういう形でどこでもできます、というのが私の強みで。先生だから偉そうにしない、スクリーン用意しろ、何々用意しろとか一切言わずに、私がコンピューターを持っていて、どんな会議室でも、どんなオペ室とかでもできる、という体制を整えています。
この仕事をやってて良かった瞬間は
つい最近、SNSでアンチコメントがついたときがあったんですよ。「そんな変な喋り方やめた方がいいんじゃない」「声入れない方がいいんじゃない」っていうのが。もうそれが嬉しくて、わーって返していた時に、6年前に先生の授業を受講していた者です、と。私の良いことをわーって返してくれた学生、元教え子がいて。そういう再会をしてしまうと、この仕事をやめられないと思ったのと。私、大学でホスピタリティって教えていて、やはりCA、客室乗務員になりたいっていう学生が多いんですけれども、偶然に飛行機で会ったんです。それは感動しました。私はもう本当に、その頃はまだ3回目ぐらいの授業で、まだまだ講師としては至らない点が多かったのに。日本の航空会社って、お客様にはがきでメッセージとか書いてくれたりするんですけれども、そこに私を持ち上げる言葉をいっぱい書いてくださって。もうそんなことはない、彼女の方が上ですと。もう私はそんなに、まだまだひよっこ講師だったのに、先生に憧れていたので、こんなような仕事につきましたとか、そういうことを書いてくれた葉書を見た時ですとか。やはり元受講生からの数年後の言葉、そういうものが本当に嬉しくて、泣きますね。
この仕事で誇りに感じることは何ですか
若い方たちに影響を与える機会をもらえて、そこで良い影響が与えられるチャンスがあるってことは、すごく誇りです。
コーチングとはどういうものなのでしょう
コーチングの業界ですとか、スタイルとか、いろいろありまして。ただ、コーチングというと、未来に達成するための伴走とか、そういう言い方があります。未来に飛ばす前に、過去にいろいろなわだかまりがあると、未来に飛べないんですね。なので、その過去のわだかまりは、このカウンセリング、ヒアリングというものがあって、そこをちゃんとクリアにして、マイナスからゼロにして、そこからゼロから100に飛ばしてあげる。このゼロから100に行く領域がコーチングで。このマイナス部分は、コーチではないけれど、これはカウンセリング、ヒアリングです。
ワークライフバランスについて
そうですね、今、子育てをしていない身なので、仕事がワークアズライフ。ワークアズライフ、大好き。仕事が趣味だし、仕事が楽しみだし、仕事がガソリンです。私の場合、私の年代は、働くことがそんなに推奨されていなかったですし、私も下の娘が10歳になるまで専業主婦でしたので、働いても、やはり子供の行事に影響を及ぼさない感覚で、という形で働いていました。そんな形で、子供のスケジュールを軸に働くという形をとっておりましたけれども、今は違いますね。私、忙しいのが大好きなんですよ。「ちょっと仕事が重なったりして大変でしたね」とか現場で言われると、暇ほど辛いものはない、暇だとメンタルがやられます。趣味が結局仕事に生きてきたらいいことですし、なんか分けちゃうと、いいものって作れない気がして。結局、生活で役立つものとかが、そのままビジネス価値になったりするので、境をあえて作る必要ってないし、逆に、分けようとか、そういう境界線を張るってこと自体の考えのほうが、私はハテナですね。
ご自身の成長のために何をされてますか
勉強会に通ったりですとか、あと私、今はオンラインで大学の授業を受けていますし。なので、新しい情報を入れないとダメな仕事なので。今受けているのは、イェール大学のウェルビーイング。よくウェルビーイングっていう言葉、聞きませんか。心も仕事も生活も、すべてにおいて幸せよ、ということです。ウェルビーイングも言う方によっていろいろな言い方があるんですけれどもね。私はもう、あらゆる面で幸せを感じて感謝できる状態に持っていくのが、ウェルビーイングだと思っているので。
料金はどのように決めているのでしょう
初めのうちは、例えば大学で教えるとなると、もう時給換算すると1000円いかないぐらいで。一生懸命すればするほど、お金に換算すると、というのは、学生のフィードバックとか、こだわって書くと、毎日夜中になりましたので。ただ、損してるとかも思いませんし、自分がやりたいからやっているという形で。現在の仕事に関しては、安く受けてしまうと、自分のブランディングですとかがなくなってくるので、お金は上げるようにしています。上げただけだと、もちろん罪悪感がありますから、ちゃんと高いものを提供できる中身、高い中身にして、それを買える人にしか届けない。そういうふうにしていきたい。初めのうちは、低価格なものを誰にでもっとすると、やはり本当に大変なことがあったので、今はちゃんと中身に、お金をかけていろいろな勉強会に行って、この内容は私しか持っていない、というものを作って、それを高くして、買える人にだけ届ける、そういう形を心がけています。ですけれども、またそれができているときと、できていないときと、もうちょっと取れなさそうとなったときに、安くしますよ、というときももちろん、まだまだございます。
仕事とお金について
お金って、仕事以外でしたら、幸せにもするし、不幸にもするものだと思うんですよ。なきゃ本当にすさまじくなりますし、ありすぎると、かえって人生が崩れる方っていっぱいらっしゃるじゃないですか。変な人が寄ってきたりとか、あとは強盗にあったりとか。本当に良い加減じゃないとダメなもので。ちょっと潤ってるが理想ですね。やはりちょっと少ないよりも、ちょっと潤ってる。だから仕事に関してもそうだと思ってます。ちょっと潤ってるから、じゃあ次これを、例えばホームページを新しくしよう、YouTubeにお金をかけようとか、潤ってこそ次の段階に行けるので、プラスアルファが必要だと思います。
仕事はあなたにとってどんな存在ですか
今、私、家も日本にもタイにもありますし、もう海外にもしょっちゅう通っていますけれども、仮に十億円もらったとしても、仕事は絶対続けます。一番のエステです。もしこれ、仕事しなくなって、どんどん歳をとって、どんどん汚くなっていくって、心がカラカラになってしまいます。あと、向上心がなくなる。やはり、嫌なこととか大変とか、自分が満たされて、まだまだここじゃないなって分かるときがあって、そこで頑張ろうってするので、すごくいいエステになってます。メンタルの面での若返りエステ、美容の蓄積ですね。
これからの夢を聞かせてください
やはり、私、CAN(できること)とWILL(したいこと)とDREAM(夢)に分けた時に、今の段階ですと、WILL、何々したいと言ったら、接客とかホスピタリティという言葉を、もっともっと広めたい。日本の良さ、ホスピタリティができるのって、やはり日本の独特なものが、ちょっと今、捨てつつあるんですけれども、昭和で言われていたものとかも、もう一度戻したいという気持ちがあります。ただ、DREAMの部分で言うと、やはり私はタイに救われて今がある、仕事がある。なので、日本に来る外国人労働者の方のサポート、ケアをしたいです。5年後には、日本でそういうことができる人と言ったら私を思い浮かべていただけるくらいに、頑張りたいです。
講師を目指す方へメッセージを
今まで生きてきた人生が、唯一無二、その人にしかない人生なので、それをいっぱい棚卸しして、自分のオリジナルなストーリーを作って、次世代に話す。それって、自分にとっては当たり前かもしれないけど、他の人からしたら当たり前ではない、貴重なストーリーなので。自分が歩んできたもの、あと、大変なことほど財産になる。私、今まで仕事をしていて、大変だな、嫌だったなーっていうものだけがお金になっていて、楽しかったものというのは、お金にならないんです、不思議なことに。例えば私、日本の航空会社に募集がなくて入れなかった、これ、私にとってつまづきだったんですね。つまづきと思っていたものが、かえって海外に出たことによって、今は別枠の仕事がいただけていて。あとは、娘を海外に行かせるとか、そういう環境にも入れたのと、あとはやはり海外にもまめに行く今の環境は、挫折だと思って泣いていた20代の大学生の私に聞かせたいです。全て、嫌だった、辛かったことが、一番いいビジネスの材料になっています。楽しんでください、嫌なこと。嫌なことは、神様からもらったプレゼントです。